デザイン思考で、昔ながらに新たな価値を。(前編)
- インタビュー対象製品「光のお供え」
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神棚文化が失われている昨今、モダンさを取り入れた神棚・神具の開発をスタートされ、一貫したコンセプトと見せ方で、高い評価を得られています。同事業の人気製品「光のお供え」水・米・塩を封入した、光のオブジェ。太陽の神ともいわれるその天照大神から着想を得た、光り輝くお供え物です。特殊な手法により、水・米・塩を封入。お供え物をイメージし、神棚などに末永くおまつりすることができます。
- 会社名
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株式会社ユニグラフ
- 設立
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2010年 11月
- 住所
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静岡県静岡市駿河区宮竹1丁目10-23
- 業務内容
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1.オリジナル製品事業:モダンでおしゃれな神棚や神具「かみさまとおうち」の販売・通販。
2.ブランディング支援事業:広告・WEB・写真・動画などを総合した、セールスプロモーションやブランディングの支援。
代表取締役社長 兼 デザイナー 山本 剛直 様
広告・WEB・写真・動画などを総合した、セールスプロモーションやブランディングを行いながら、自社製品の開発、製造、販売を行う。オリジナル製品の「貼る神棚」では、Good Design賞を受賞。シンプルかつ美しいデザインが多くのお客様の心をとらえている。
今回お話を伺うのは株式会社ユニグラフ 代表取締役社長 兼 デザイナーの 山本 剛直 様です。オリジナル製品のひとつである「光のお供え」の特許出願、商標登録やものづくり補助金申請を弊所で行ったことをきっかけに、高いブランド力を持つ同事業への想いや製品開発の経緯を伺いました。
成功をおさめる事業はどのように生まれたのか。お聞きする中で見えてきたのはお客様視点を軸とし、デザイナーとして培われた表現力・技術力を集約した事業であること。一人よがりではなく、お客様・クライアントの困りごとを解消するためにはどうしたらよいか。その一途な想いが形となり、唯一無二の顧客に刺さる製品が生まれました。文字にすると答えはとてもシンプルですが、実際に経営を行うとなると多くの課題や苦労がつきものです。将来を見据え、どう動いていくか、同事業に沿ってお聞きしていきます。
大切にしている想いは?
竹井 株式会社ユニグラフ様が大切にしている想い、企業理念ありますか?
山本 大まかな企業理念になってしまうのですが、一言で言うと、役に立つこと。役に立てば売り上げが上がる、がモットーです。小難しい経営のテクニック、というよりは、どうやったらお客さんの役に立てるか、をひたすら繰り返しています。
竹井 モダン神棚「かみさまとおうち」の事業以外にもデザイン制作・ブランディング支援などのコンサルティング業も行っているようですが、支援業についての理念はどうでしょうか?
山本 コンサルティング業の理念としては、クライアントの役に立てるように、僕らが過去に経験した上で効果があった活動を提供するようにしています。予算をいただいてやるからには予算以上の役に立とう、という思いがある。ただ、クライアントさんがこういうのをやりたいと言っても、全然それは役に立たないですよ、お金の無駄になると思いますよ、ってことも本当に多くあります。
他のデザイナーさんによっては、自分の好きなデザインをしてしまったり、クライアントの要望のまましてしまったりという人もいます。正直、デザイナーの独りよがりでやっているところはどんどん厳しくなっている印象ですね。僕らは、お客様・クライアントの立場にたって、を大原則としているので、役に立てるかどうかっていうのが一番大事だなと。そこで自分が出ちゃうかどうかが分かれ道なんじゃないかと、思う部分はあります。
20年後に達成したい未来は?
竹井 企業として、20年後、どんな姿を思い描いていますか?
山本 一番大きい夢は、神棚に興味がなかった人・面倒でやめてしまった人たちを掘り起こし、神棚や神社に興味を持つ人を増やす。そして神道の維持ができたら嬉しい。大きな夢なので、僕らだけでどこまでできるか分からないですけど、それを元に立ち上げています。
その上で、たくさん売って儲けようっていうよりは(それももちろん0ではないですけど 笑)、事業として成り立たせたい。僕らは昔からやっている大きな神棚屋さんと勝負はしないので、0から1の掘り起こしをすることをずっと掲げてやっています。
0というのは、神棚に興味がない、知らない、面倒くさい、昔実家にはあったけど、新しく住んだマンションではやっていないという人たち。神棚やお供えなど、楽にできる商品をまず創って、そこから、「あ、これくらいだったらできるかも」、「御札はそのままにしていたけど、ちょっと保護するように神棚に入れてみよう」とする人口が増えていけば、もっと立派な神棚にしたい人たちが、将来他社さんの大型の神棚を買ってみたり。いろんな家に神棚があって、みんなが毎朝向き合って、今日も1日頑張ろうという気持ちになる人が、何万人、何百万人って増えていたらいい。すごくいい流れだと思うんです。
今、実際に神社の倒産や廃業が増えていて、神社に人が来なければお賽銭も集まらないし、御札もお守りも買ってもらえないと言っていて、しょうがない文化の流れではありますが、「ちょっと待って待って!簡単なのもあるから!新しいところから安くやってみようよ!」って歯止めをかけるのが、自分の役割なのかなと。日本の神社文化を守るっていう意味の1つではあります。
「光のお供え」の事業理念は?
竹井 モダン神棚「かみさまとおうち」ブランドのフロント商品「光のお供え」の概要を教えてください。
山本 ざっくばらんな言い方をすると、面倒くささを解決するのが「光のお供え」です。
神棚をお祀りする上で、いくつか大きなネックがあります。大型で、壁に設置をする、だけどマンションの壁に穴は開けられないとか。その中でも一つ大きいのが、神棚を設置した後の、昔からの決まり。毎日お水を交換したり、古くなったお塩・お米を替える手間がかかります。神棚は高いところあるので、何回も昇り降りするのが大変だったり、危険だったり。そのハードルが高くて、神棚を設置してしまったら、それをやらなきゃいけないからちょっと嫌だな、じゃあそもそも設置しない、となってしまうのは寂しい。
そこで「光のお供え」というものを作って、その樹脂の中に本物の水と米と塩を入れて、これを置いて、半年、1年に1回交換してみるとか。半永久的に、壊れたりなくしたりするまでずっと置いてもいいよっていう考えもあるかもしれない。前提として、日々の交換の大変さや、危険の回避という問題を解決する商品として出しました。とはいえ、単純に見た目がとても綺麗だからと気に入って買ってくれる方も多いですね。
竹井 本当に美しくて。私達の事務所でも窓際に飾っていて、いつも神聖な気分になります。
山本 キラキラしたものって、神聖な気分になりますよね。太陽光に当たると特に。
竹井 見た目が単純に美しい。元々、神棚ってそんなに見栄えがいいものじゃなくて。オシャレにしたいっていうところも間違いなくあるんじゃないかと。やはり先ほど仰っていた、0から1にっていうところで、この製品は例外なく一貫しているんですね。
山本 これくらいだったらできませんか?っていう製品です。
竹井 素晴らしいですよね。企業理念の土台がある。それを全ての製品で一貫しているっていうのは。
山本 一貫したブランド構築を強く意識しています。ただ格好いいと思ったから出すのではなく、役に立つか、ということは、ブランドとしてあるべき姿だと思います。
競合製品は?
竹井 競合と位置付ける製品はありますか?
山本 今のところはあまりないと考えています。僕らは競合を意識して、当てにいくことは普段していなくて。なので、競合なのは、昔ながらの普通のお供えです。手間となっていたものを、樹脂に入れて固めて、湿気にも強くて腐らない、半永久に使えるものを創る、という想いがありました。既存の商品に少しだけ手を加える、というより根本からその商品の在り方を見直す、という考え方が多いと思います。
竹井 やはり独自の製品ってそもそも競合がいないんですよね。
山本 はい、0からですね。
竹井 逆にいうと、そこを開拓していく。その勇気と精神力が必要になってくるところですよね。
山本 そうですね。勇気も要ります。もちろん僕らもいつ、神社さんや他の神棚屋さんに怒られるんだろうって思いながら、意外と怒られないですけど(笑)。実際に人離れがひどくて困っている神社さんが自らアイデアを出して商品を作るというのはありえない世界。「こういうのを、どんどんやってくれるとありがたい」っていうお声を本当によくいただきます。
竹井 そもそもは競合がいるってことは、それは最早新しくない、ということですね。
山本 今でこそ「光のお供え」の類似品はたくさん出てきていますが、作った時にはほぼいませんでした。 パクられる方がいい。それが素晴らしいってことになるので。それを持ってやっていかないと、もう必ずパクられるので(笑)。とはいえ、なるべく防ぎたくはあるので特許は出してます。
技術やノウハウは?
竹井 今回の製品に活かされている御社の技術や苦労された点はありますか?
山本 「光のお供え」は三角と四角のシリーズがあり、三角は職人が手で内製しています。機械がほとんどなく特殊な仕事なので、特殊な液状の樹脂を使って、それを職人が封入しています。三角形の真ん中に米、塩、特に水を固定して入れる技術はものすごく高度なのでパクリができてこないのは、それがまず難しい。周りの方から「これどうやっているの?」ってお声を頂きますね。それは僕らも半年くらい、いやもっとかかったかな。発売後も、もっときれいに、と職人が日々やってくれています。
四角形は外注しています。そこで半年、1年かけて共同で開発しました。そこでも特に水の封入は上手くいかなくて。アクリル樹脂の中に”生もの”の水を入れるのがかなり難しいので、その点で苦労しています。
製造パートナーとの出会いは?
竹井 製造にあたって、必要なパートナーはどのように探しましたか?
山本 とある方からの紹介で繋がりました。
竹井 何社かあたられたんですか。
山本 2社あたりました。どちらもよい専門業者さんでしたので、一方に「光のお供え」の製造をお願いし、他方には他の製品でお世話になっています。
竹井 多数の業者さんを比較してかなり労力をかけて厳選する企業さんもいますが、今回はかなりスムーズだったんですね。
山本 うちが自分たちでブランディングしていて、売価を自由に設定できるので、予算であまりハードルを感じなくて済むっていうのもある。見積額が高くて無理、の繰り返しがあまりないのでかなりスムーズですね。
見積もりが想定よりも高く出て来たら、頑張って高くても満足して貰える商品にしよう、という動きができるので、あまり仕入れ価格の上限っていうのがない。 お話しして、技術力があって、完成度も高く、職人さんの感じも良かったら、多少高くてもGOするみたいな感じがあるので、うちはかなりスムーズかもしれない。それに、手伝ってくれる業者さんも一緒に、みんなで幸せになれなければ、関係も長続きしないと考えています。そのためには、ブランディングが大事って話になってくると思います。
一番の特徴は?
竹井 「光のお供え」の一番の特徴はどんな点ですか?その特徴はどんな状況で一番輝きますか?
山本 ユニークな見た目の特徴としては、輝きと透明度。これは三角と四角、どちらのモデルもです。
四角いモデルは、材質からアクリル屋さんにお願いして、初めから綺麗なアクリルが出てきたので、1発で決まりました。三角の方は5~7種の液体を試しました。安い素材は創り立てでも黄色く、更に太陽光にさらすと、直ぐより黄色くなってしまうものが多くて。なので中でも一番高級な素材を使っています。世の中の普通のプラスチックはすぐ黄色くなっていきますが、今のところ、3~4年置いてあるものも、出来立てほやほやの時とほぼ見た目が変わりません。何年経っても、透明度が変わらない。
また、中身が見やすいように、気泡をなるべく入れないように創っています。ただ、難しいところで、気泡が0だとちょっとつまらないんですよ。中の米の周りに少し気泡が付いていたりすると、水の中みたいで、中に本当に入っているんだっていうのが出るので、少し気泡が入る程度っていうのが一番中身も見えるし、美しい。
竹井 その特徴にこだわった理由っていうのは、お供え物として鮮明に見せたいっていう思いがあるんですか?
山本 そうですね。プラス、僕らの神棚の事業では、楽しんでやってほしいを大切にしています。気持ちが入れば毎日お参りしたくなるし、趣味までいかなくても、好きなものになれば、いつも見て楽しいとか、お出かけして買ってきたそれっぽいグッズを置いてみようとか、そういう楽しみもできるので。楽しんでもらうためには、ただただ形式張ったよくわからないものというよりも、綺麗なもの、見て楽しいものっていうのがあるので、見栄えは大事にしています。
竹井 なるほど。一貫していますね。